〜starting over〜
まだ15なんだし、このまま終わりじゃない。
人生100年時代と言われるスパンで考えれば、今のこのほんの僅かな時間が辛いからって人生終わりなんて勿体ない。
負けっぱなしなんて、そんなの悔しい。
今までだって、頑張ってこれたんだから、きっとこれからも大丈夫。
そう自分を鼓舞して、身体の泡を洗い流していると、ダンッ!と大きな音が響いた。
吃驚して、自分の世界から現実に呼び戻されると、外が騒がしい事に気付く。
シャワーをとめ、聞こえてくる音に耳を立てると、はっきりと聞き取れないけど、なんか口論しているような……。
てか、一方的に男の人の声がやたら響いてくる。
脳裏を過ったのは、さっきの真っ黒な車。
お母さんは、まだ外に居るのかな?
妙に胸騒ぎがして、すぐにお風呂場を出た。
知り合いなのか、心当たりありそうな感じだったけど、威圧的で怪しい雰囲気の車だったから、心配。
ザっと簡単に身体を拭くと簡単に着替えて玄関に向かう。
ドアノブに手をかけて押したら、開きかけたドアが押し返された。
お母さんが押さえてる?

「え、どうして……。お母さん?」

何度もドアノブを押してもびくともとなくなった。

「明日が期限だからな。もし金が用意できないようなら覚悟しておくんだな」
「そう睨むなよ。俺達だって仕事なんだよ。恨むなら、佐伯を恨むんだな」

しゃがれた声とドスを効かせた声がした。
期限?
お金?
佐伯?
何?
嗤い交じり「じゃあ明日な」と捨て台詞が聞こえてから、エンジンがかかって遠ざかってく音がした。
やっと緩められたドアを勢いよく開け放つと、怖い顔で唇を噛みしめるお母さんが立ち尽くしていた。

「今の……どういう事?」

私の言葉が聞こえているのか、いないのか。
一瞥すると、そそくさと靴を脱いでリビングへ引っ込んでしまった。

「お母さん……」

背中に声を掛けると、

「お母さんちょっと忙しいから部屋に行ってなさい」
「さっきの……」
「いいから行ってなさい!」

ピシャリを遮られた。
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