〜starting over〜
本人は欠席のつもりだったみたいだけど、少しでも顔を出せとお呼び出しの電話がきたのだ。
会社での年始飲みなんて、仲が良いと言うか、団結力があるというか……。
湊さんは、怠そうに着替えてはニット帽をかぶって、溜息1つ吐いて出て行った。
お疲れ様です。

その後も、湊さんは時々思案する様子が見受けられたり、何となく、ここに来た時とは違う空気が漂う中、私は16の誕生日を迎えた。
音信不通だった両親から、湊さんを通してプレゼントが届いたのには予期せぬ出来事だったけど、凄く嬉しかった。
メッセージカードには、確かに母の字で『おめでとう』の文字が。
私の事を忘れられたわけじゃないんだ。
懐かしさと嬉しさで、鼻の奥がツーンとしたけど、湊さんが傍に居たから堪えた。
箱を開けてみると、中には花を模ったシルバーネックレスが。
花の中心には、私の誕生石である深みのある赤いガーネットが鎮座していた。
石言葉は、真実・友愛・忠実・勝利・実り……。
それからネックレスは、常に私の胸元にあるようになった。
また季節は巡り。
あっという間に、纏う空気に春の気配を感じるようになった。

今日は、バイトが休みで、朝から掃除機をかけていると、インターホンが鳴った。
ドアホンを覘き込むと、キャップを深く被った男性が立っている。
顔は確認できない俯き加減が怪しい……。
こんなご時世だし?
私は、見ない事にした。
だけど、もう1度インターホンが鳴った。
無視無視。
女の子1人の時に、無暗に応答するのは危険だし。
この家は留守ですよー。
ドア本越に見る男性は、焦れたようにスマホを取り出し何処かに通話を始めた。
やだー、なんか怖い。
男性が立ち去るまで気配を消すのに徹していると、今度は私のスマホが鳴った。
わーっ。
わーっ。
わーっ。
心の声で着信音が無くなる訳じゃないけど、内心叫ばずにはいられない。
< 43 / 104 >

この作品をシェア

pagetop