敏腕メイドと秘密の契約
天音は人払いをすると、木村(藍)を中に押し込み、ステージ裏のコンピューター操作室の鍵を閉めた。

そして、唇に人差し指をあてて
"静かに"
と藍に合図すると、スマホのオフィスソフトを開いて、

"緊急事態、盗聴機、盗撮機を探したい"

と打ち込み、画面を藍に見せた。

藍は頷くと

"ここに兄を呼びます"

と、スマホに打ち込んで返事をした。

藍は自分のスマホを取り出し、回線の向こうの相手とドイツ語で会話を始めた。

"もう会場に着いているそうです"

藍の兄:雄貴はBG=ボディーガードだ。本日のパーティでBGの総指揮を執る。元SPで、とても有能な刑事でもあったと聞く。

ほどなくして、SNSの着信音が響いた。

"着いた。ドアの前にいる"

藍のスマホには雄貴からのメッセージが表示されている。

藍がスマホを天音に見せると、天音は軽く頷いて入り口のドアを開けた。

藍が天音を見て頷くと、雄貴が中に入ってきた。

雄貴は、室内をぐるりと見渡すと、怪しい箇所をくまなく見て回った。そして、光学式と電波式の盗撮機発見装置と無線型の盗聴機発見装置を使って捜索を始めた。

「大丈夫だ。ここには仕掛けられてない」

雄貴が声を出すと、天音と藍は安堵の溜め息を漏らした。

「初めまして。倉本天音です。この度は大変お世話になります。よろしくお願いいたします」

天音は雄貴に名刺を差し出して挨拶をした。

180cm近くある身長に筋肉質の体。とにかく目力の強い雄貴は、藍とは似ても似つかない風貌をしていた。

「挨拶なんかしてる暇はないぞ。今日のレセプションに間に合うのか?」

雄貴は、パーティホール内のすべての箇所を調査すると言って出ていった。

「そうですよ。副社長。概要を教えて下さい」

天音は、藍に発生した緊急事態の内容を知らせた。
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