極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
「・・・あのひとに何かされたわけじゃ、ないの」
そのことだけは必死で否定する。

「———具体的な行為じゃなくて、言葉で傷つけられたってことか」

どうして彬良くんは、なんだって分かってしまうんだろう。

「なんて言われたんだ」

ぎゅっと結んだ唇を、思い切って解く。
「わ、わたしのことを、損得で男と寝れる女だって・・・」
声は震えて、語尾はすぼんで消えていった。それだけじゃない、頭が軽くて体がゆるいとか、佐伯くんと別れたら俺が引き受けてやってもいいとか、彼に浴びせられた言葉は一言一句頭にこびりついて離れない。
心に傷口があるなら、そこからどくどくと赤い血が流れて止まらない。

うつむく視界に、彬良くんがソファの上でぐっとこぶしを握るのが映る。
顔を上げると、彼と目があった。瞳が傷ついたような色をたたえている。わたしは大切なひとを傷つけてしまったのか。
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