藤堂さん家の複雑な家庭の事情

通例行事①

「母ちゃん」

「……」

「母ちゃんってば」

「……」

「母ちゃん、腹減ったあ」

そもそも子供ってもんがどういうもんなのか知らないけど、あたしの琢は毎朝空腹を感じて目覚めるらしい。


しかもきっちり6時10分で、その体内時計の正確さに驚かされる。


平日も休日も琢には関係ない。


一応毎朝5分くらいは寝た振りして誤魔化そうと試みるけど、「腹減った」って言われたら無視する訳にはいかなくて、揺り動かされる体を渋々起き上がらせる羽目になる。


ふたつ並んだ布団をとりあえず畳むだけ畳んだ後、


「藍子起こしといで」

「うん!」

部屋を一緒に出た琢は、藍子の部屋に走ってく。


あたしは反対方向にある階段に向かって、まだボーッとした頭のまま階下に下りていき、7時に起きても間に合うはずの朝ご飯作りを始める。


一般家庭の大半がそうであるように、いくら早く起きたとしても、朝は何だかやる事が色々あって忙しくなる。
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