藤堂さん家の複雑な家庭の事情
余計な靴は一切出てなくて、常に「今」履いてる靴しかない状態がいつ来ても継続されてる。


廊下の隅にほんの少しの埃もない。


廊下の突き当たりにあるリビングのドアの硝子もいつもピカピカ光ってる。


そんな、あたしに言わせれば「潔癖」の域にも思える惣一郎の掃除の仕方は、本人に言わせれば「人よりちょっとだけ綺麗好き」なだけらしい。


でもその言い分には一理あるとも思う。


だって惣一郎は部屋を汚される事を嫌がったりしないから。


琢が泥だらけで部屋に入ろうが、リビングではしゃぎすぎてジュースを零そうが、惣一郎は「気にしなくていい」と笑って、嫌な顔ひとつしない。


あたしには到底真似出来る芸当じゃない。


我が家でそんな事された日には、あたしは確実に琢を怒る。


だからそういう面で惣一郎は、あたしよりも出来た人間だと思う。


「とりあえず入らない?」

玄関先で、そこから見える廊下やドアを眺めてたあたしを、惣一郎はクスクス笑って中に促す。


促されるまま靴を脱いだあたしは、
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