藤堂さん家の複雑な家庭の事情

誰にも言えない

「先にシャワー使っていいよ」

たっぷりと時間を掛けた儀式は、終わった後にほんの少し余韻を残す。


寝室には、あたしと惣一郎の匂いが充満して、何となく全体的に湿っぽい。


「汗、凄い」

「心実の?」

体を起こしたあたしに、ベッドにうつ伏せになったままの惣一郎は声を掛け、


「惣一郎のでしょ」

「心実も汗凄いよ?」

言葉を発しながら、まだ足りないと言うように、あたしに触れてくる。


でもあたしはもう十分堪能したし、体力的にももう限界。


「そういえば、惣一郎」

「うん?」

「あんた、藍子に変な事言うのやめてよね」

「変な事?」

「ホスト辞めたの、あたしの為だとか何とかって言ってんでしょ」

「まあ、それっぽい事は言ったかな」

「嘘言うのやめてよね」
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