藤堂さん家の複雑な家庭の事情

終わり

藤堂家がぎこちなくなる期間の終わり。


藤堂家では、テスト最終日の夜は決まって家族で外食をする。


期間中ずっと早番で通し仕事をしていた翡翠が店を休むこの外食は、表向きはテスト勉強を頑張った藍子の慰労会という事になっているが、実際は家族全員の苦労を労う会である。


翡翠の運転する自家用車で藤堂家一同が来た場所は、都心部にある焼き肉店。


高級――とまではいかないが、それでもそこそこいい値段のするこの焼き肉店に藤堂家一同が来るのは、この期間の時だけだったりする。


その所為か、予約していた個室で焼き肉を食べる家族は皆、機嫌がいい。


「あたし、補習受けなくていいと思う」

自分のお肉の焼き加減を見ながらニコニコと――少々得意げに――そう報告した藍子に、翡翠と心実は顔を合わせてから目を向ける。


その過程に気付かない藍子は、自分を見つめる兄と姉に笑顔を向け、


「多分だけど」

言葉とは裏腹な、清々しい表情で付け加えた。


「結構出来たんだ?」
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