藤堂さん家の複雑な家庭の事情
どうせ無理だと諦めていては、生活の面倒をみる為に働く兄と、きちんとした毎日の生活を送れるように家事をしてくれている姉に申し訳ないと思う。


「勉強」が出来ない頭の悪い藍子は、「人」として頭はいい。


それは家庭環境のお陰だろう。


藤堂家の家庭環境が、自然と藍子にそう思わせる。


そして家族の誰もが、その藍子の気持ちを分かっている。


家族を喜ばせようと必死に勉強しているのが分かっているからこそ、気遣い、出来る限りの事をする。


つまり翡翠や心実や琢にとってはテストの結果なんてものはどうでもいい。


家族を思い、勉強を頑張っている藍子の姿を見ているだけで嬉しくなる。


結果は関係ないのだ。


努力の過程を見ているだけで充分なのだ。


だから、期末テストの結果が赤点だらけで、夏休みに補習を受けなければならない事実を言い辛そうに藍子に打ち明けられても、藤堂家の中には藍子を怒る人間はいないし、当然トワも怒らない。


そしてまたテスト期間がくれば、同じように藍子を気遣う。


常にそれの繰り返しだ。
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