藤堂さん家の複雑な家庭の事情
その所為で5日ほどあっちに行くのだろうと思った。


むしろそれ以外に翡翠があっちに行く理由がないだけに、他に何かあるとは微塵も思っていなかった。


だからこそ。


「あっち、売上悪いのか?」

「いや」

続け様にした質問への翡翠の返事が否定だった事に驚いた。


もうトイレの前まで来ていたトワは、思わず「は?」と振り返る。


振り返った先にいる翡翠は変わらず洗い物を続けていて、その目がトワを見る事はない。


そんな翡翠は、


「なら、何しに行くんだ?」

トワのその問いに、「うん」と返事をした。


答えにならない返事に、トワの眉間に皺が寄る。


さっきから感じていた違和感が嫌な予感に変わり始め、トワはザワザワとした落ち着かない感覚に襲われた。


「おい、翡す――」

「金がいる」

これまで言葉を濁していた翡翠がトワの言葉を遮って答えたのは、言わない訳にはいかないと思ったからだろう。
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