藤堂さん家の複雑な家庭の事情

1日目 昼

兄が何やらおかしいと、心実が不審に思ったのは昼過ぎの事。


いつもは放っておくと夕方近くまで寝ている兄が、昼過ぎに自発的に起きてきたから不審に思った。


昼食の後片付けをしていた心実は、リビングに入ってきた兄を見てポカンとし、余りの驚きから思わず「は? 何?」と疑問の言葉が口を衝《つ》いて出る。


驚いたのは心実だけではなく、ソファに座ってテレビを見ていた琢も同じようで、琢はソファの背もたれから顔を覗かせ、「翡翠君、どうしたの?」と目を瞬《しばた》かせた。


「どうしたって何だよ?」

気だるそうな声を出し、ダイニングテーブルまで歩いていった翡翠は、体を投げ出すようにして椅子に座ると、「珈琲」と言ってテーブルに突っ伏す。


見るからに寝不足だというその態度に、心実の不審に思う気持ちは増幅し、


「眠いならもうちょっと寝てれば?」

サイフォンにお湯を入れながら訝しげな声を出した。


それでも、翡翠は「んー」と唸るだけで動こうとしない。


ようやく動いたのは心実が珈琲をテーブルに置いた時。


のっそりと顔を上げた翡翠は、ソファから様子を窺っている琢に目を向け、
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