藤堂さん家の複雑な家庭の事情

イレギュラー①

テスト前によく来る図書館は、学校の近くにある大きな図書館。


映写室なんかもあって、密かに人気があったりする所。


ただあたしと同い年くらいの人達はそもそも図書館なんかに寄り付かないらしく、人気があるって言っても大人の人にって感じだから、日曜は逆に空いてたりする。


そんな、ポツンポツンと席が埋まる図書館で、


「眠……」

あたしは大欠伸してる井上先生と対峙《たいじ》してる。


うちの学校の生徒が来る事はないから誰かに見られるって心配はないけど、何だか居心地が悪い。


しかも井上先生は、勉強を見てくれるって言ったのに、体ごとそっぽを向いて欠伸ばかりで、あたしの方を見ようとしない。


それならいっそ帰ってくれた方が落ち着いて勉強出来るのに、井上先生はもう1時間もこうして机を挟んだ向かいの席に座ってる。


これは逆に迷惑だと思う。


勉強を見るどころか、邪魔してるように思える。


そんなあたしの思いとは裏腹に、徐に席を立った井上先生は何やら本を取って来て、元の席に座った。


勉強を見るつもりはないらしい。
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