藤堂さん家の複雑な家庭の事情
もちろんあたしも想定外の事が起きて、愕然としてしまってるんだけども。


「頑張ったら琢ちゃんのでも使えるかなあ?」

「琢ちゃん?」

「甥っ子の名前、琢ちゃんって言うの。琢ちゃんのでも頑張ったら入るかなあ?」

「…………」

「一回、どんなもんか膨らましてみようかな」

「…………」

「もしかしたら入るかもしれないし」

「…………」

「どう思う? 飯垣君」

「やるだけ無駄だと思う」

「うん。実はあたしもそう思ってた」

笑ってそう答えて諦めて浮輪を鞄に戻したら、飯垣君もちょっと笑った。


涼しげなその笑顔とは裏腹に首筋は暑そう。


Tシャツも汗ばんできてるのが、肌へのくっ付き具合で分かる。


今日は風もないから特に暑い。


プールサイドは空気がモワモワしてる。


「飯垣君、炭酸好き?」

「好きも嫌いもないけど」

「飲める?」

「うん」
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