藤堂さん家の複雑な家庭の事情
だからそう言ってみたんだけど、井上先生は納得出来なかったらしく、「は?」と小さく言葉を吐き、眉を顰《ひそ》めた。


「わざわざ来てやったのに? 普通そんな事言うか?」

「でも明日の小テスト数学だし……」

「あー、お前あれだろ。昨日の事もう友達に言っちゃったんだろ」

「へ?」

「だから俺を帰そうとしてんだろ。今更何されても手遅れってか?」

「友達には言ってませんけど……」

「は?」

「言ってないです」

「……マジか?」

「はあ」

「マジで言ってんの?」

「マジです」

あたしの返事に井上先生は「ふーん」って声を出し、一度天井に目を向けてからあたしの方に向き直る。


そして持ってた本を机の上に置くと、「どれ?」と少しだけ身を乗り出して、教科書を覗き込んだ。


「二次関数……」

「グラフかよ」
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