吐露するキズ跡
あたしは、このヒトのちょっとハスキーがかった声に、とても弱い。

脳みそが、ちょっとゆるむ。

「…追いついて、声をかけてくれるんだと思ってたのに、違うんだ」

言って、ふんわり、笑う。

かわいい笑顔。

ああ、羽ちゃんだ。って思う。

でも、何かちょっと、寂しそうにも見える。

羽ちゃんは、数ヶ月、その身体にもう一つの魂をいれて生活していて、今、その人はもういない。

寂しそうなのは、その喪失感のせいなんだと思う。

前とは違う、

何だか人を安らがせる雰囲気をまとっているのも、そのせいなんだ。

ただ、ふんわり安らぐんじゃなくて、

そうじゃなくて。

心の中に、ぱっくりと開いてる傷口を抱えていて、

ダラダラ、血なんか流しっぱなしなのに、止めようともしないで、

ただただ、必死で傷を隠して微笑んでる…

だから、人には、安らぎみたいな感覚を誤認識させてしまう。

そういう、危うい感じ。

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