ホテル御曹司が甘くてイジワルです
私に向かって『好きだ』なんて言ったくせにまったく音沙汰のない清瀬さん。
やっぱりからかわれただけだったんだ。なんて少し面白くない気分になる。
別に清瀬さんに会えなくたって別になんの支障もないんだけど、なんだかやけにもやもやするのは、帰り際清瀬さんの秘書、三木さんにあんなことを言われてしまったからだ。
別に彼女の言葉が図星だったわけじゃない。
彼女の物言いがひどく挑戦的だったから、むっとしてしまっただけなんだけど……。
はぁーっとため息をついた私に、館長が声をかけた。
「あ、そういえば清瀬さんはここのところ忙しいみたいだよ」
まるで考えていることを見透かされたようにそう言われ、ぎょっとして手にしていたリストを落としそうになる。
「な、なんですかいきなり!?」
「最近夏目さん、誰かを待ってるみたいに入り口の方を見てはため息をついてるから」
「別に、お客さんがこないかなって思ってただけですよ」
取り繕うように早口で言って、リストを館長に返す。
突き返されたリストを慌てて受け取った館長は、きょとんとしたあと目元にしわを寄せて笑った。
「香港のホテルを任せていた支配人と現地スタッフの意思疎通がうまくいかなくて現地に飛んでそのフォローに入ったり、本社に戻ってたくさんの業務や会議をこなして、副社長として招待されるイベントやパーティーに参加して、さらにオーベルジュのオープンの準備。目が回るくらい忙しくて、なかなかこっちに顔を出せないって」
「……ていうか、なんで館長が清瀬さんと連絡とりあってるんですか!?」
館長の口から出てきた清瀬さん情報に思わずぎょっとする。私は彼の連絡先も知らないのに。