ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

すっと背筋を伸ばした綺麗な姿勢。
まっすぐに前を見る横顔。
凛とした印象の彼女がマイクの前で話し出す。

投影中の注意事項のアナウンスが流れると共にゆっくりと照明が落とされてドーム内が暗闇に包まれると、頭上に満天の星が現れた。

「皆様に今見ていただいているのは、本日二十一時ごろの星空になります。この季節、冬は一年の中でもっとも星空が綺麗に見える季節です」

こうやってゆっくりとプラネタリウムをながめるのは、一体何年ぶりだろう。
そう思いながら座席に沈み込みぼんやりと空を見上げる。

「青白い星が集まっているのが昴と呼ばれる星団です。清少納言も枕草子の中で『星はすばる』と残したほど、昔から私たち日本人にはなじみ深く多くの人に愛されている星です」

その話を聞きながらちらりと右横にあるコンソールを見やると、マイクの前の彼女は星を指し示すためのポインターを持ちながら、生き生きとした表情で星座の解説をしていた。


よっぽど星が好きなんだろうな。

キラキラした目で星空を見上げる彼女の表情が、満天の星よりもずっと綺麗に見えて強く印象に残っていた。






 



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