ホテル御曹司が甘くてイジワルです


戸惑いながら彼女に近づくと、「少しお時間をいただけますか」と事務所の外へと歩いていく。

きっと、館長には聞かれずに、ふたりだけで話をしたいんだろう。
館長に「すこし席を外します」と断って彼女の後をおいかけた。

事務所の前にある素朴な英国風のお庭。
その前に立った三木さんが、私のことを振り返りわずかに目を細める。

「副社長とは住む世界が違うと忠告したはずですが」

冷たい声でそう言われ、言葉に詰まった。

三木さんには快く思われていないとはうすうす感じていたけれど、こうやって敵意をむき出しにされると、戸惑ってしまう。

「まぁ、副社長のひと時の気まぐれだとわきまえたお付き合いをされているなら、こちらもわざわざ口出ししませんが」
「気まぐれなんかじゃありません!」

まるで私との付き合いは真剣ではなく一時の遊びだと決めつけるような言い方に、頭にかっと血がのぼった。

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