ホテル御曹司が甘くてイジワルです


「真央、いいのか?」
「前から思っていたんです。坂の上天球館じゃなくても、誰かに星のすばらしさを伝えることはできるんじゃないかって。むしろプラネタリウムになんて足を運ばない人にこそ、宇宙のことを知ってもらいたいって。星の話をするなら、どこでだってできる。日本でだって、世界でだって」
「坂の上天球館は?」
「館長が、『この場所は僕が責任を持って守っていくから、大丈夫だよ』って。『安心して清瀬さんについていきなさい』って言ってくれました」

館長の言葉を伝えると、清瀬さんはくしゃりと髪をかきあげて、「まいったな……」とつぶやいた。


「もしかして、迷惑ですか……?」

私が清瀬さんについてそばに居ると、邪魔になるだろうか。不安になってたずねると、清瀬さんががばりと体を起こした。

「そんなわけないだろ」

きょとんとする私の両手を掴み、私をベッドの上に組み敷く。

「嬉しすぎて、どうしていいのかわからないんだ」

本当に困ったように眉をひそめてこちらを見下ろす彼の表情に、愛おしさが込み上げた。

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