素直になれない。
隣の席で。
「へぇ…そんな事が。」
「うん、まぁね。翔はそういう人だから。」
今までの思い出話を一通りし終わった時、私は紗香の不思議そうな顔に気づいた。
「ん?」
何を考えているんだろうと思い、首を傾げる。
「あの、彩奈ちゃんはさ、そんなに仲良いのに好きになったりしないの?」
「へっ!?」
私が…翔のことを?
「ないないっ!」
これは迷わず即答できる。
恋愛対象にはならない。
ずっと兄妹同然に育ってきて、今更好き?そんなわけないじゃん。
私も、翔も、ありえないよ…。
「その話はもう終わり!」
強制的に話を切り上げると、私はぱんぱんと手を叩いた。
これ以上聞かれると、紗香の妄想が爆発しそうだし。
すると突然。
「へぇ…翔って、そういう人なんだ…。なんか意外。」
ぼそっと呟いた声は紗香のものではなくて。
「えっ?」
隣に座る和也くんだった。
「そんな人って…」
一体和也くんはどんな人だと思っていたんだろう。
「…」
横顔をじっと見つめていると、和也くんがふっとこちらを向いた。
「!?」
「何?」
和也くんは冷静だけど、私は何故か慌ててしまっていた。
和也くんの瞳はあまりにも真っ直ぐで、透き通っていたから。
「何でもないっ…」
ふっと視線を逸らし、少し熱を持ってしまった頬を叩く。
「あっつ…」
するとやはり紗香は嬉しそうた。
やっぱり私、和也くんのこと意識してるのかな?
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