冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「俺、あのとき、よりによってこれから家族ができるってときに、こんな仕打ちないだろクソ親父って考えてたんだよ」
「そうなの?」
思わず笑うと、了も表情を和らげた。腕を回して、私を抱き寄せる。
「でも、もしかしたら逆かなあと思って。家族がいるから、俺もポキンと折れずに済んだのかもしれない。父さんも、それがわかってたのかも」
「私、お母さまと少しふたりでお話しする時間があったの。同じようなこと言ってらした。お父さまがホールディングスの幹部たちの前でも、いっさい了をかばわず、一番厳しい処断を下したのは、了が父親になろうとしてるからだって」
「ほんと?」
「男ってかっこつけでバカよねえって一緒に笑ってきたわ」
了はふくれ、「かっこつけでバカだよ」とおもしろくなさそうな声を出す。了はカップ半分ほど残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「よし、結婚にはふたりとも前向きってことだな」
「具体的なことを話せるタイミングじゃなくなっちゃって、残念だったわね」
「どうせ父さんは、そういう話ははっきり語りたがらないよ。優れた経営者も、家じゃただの偏屈親父だよね」
その言いかたが完全なる他人事だったので、私は釘を刺した。
「あなたもいずれ、同じことを言われるようになるわよ」
了は生真面目に、その可能性について頭の中で検討したらしく、真剣な顔で宙を見つめ、「ほんとそうだね」とつぶやいて、また私を笑わせた。
ようやく三人がそろってゆっくり眠れる夜が訪れるかと思いきや、了はまた「事務所に行かないと」と家を出ていった。
今の了に、それをがんばりすぎだと言うことはできない。
玄関で見送る私に、了はキスをした。不甲斐ない自分を恥じているような、控えめなキスだった。
どんな了も好きよ。
そんな思いを込めてキスを返した。
* * *
「そうなの?」
思わず笑うと、了も表情を和らげた。腕を回して、私を抱き寄せる。
「でも、もしかしたら逆かなあと思って。家族がいるから、俺もポキンと折れずに済んだのかもしれない。父さんも、それがわかってたのかも」
「私、お母さまと少しふたりでお話しする時間があったの。同じようなこと言ってらした。お父さまがホールディングスの幹部たちの前でも、いっさい了をかばわず、一番厳しい処断を下したのは、了が父親になろうとしてるからだって」
「ほんと?」
「男ってかっこつけでバカよねえって一緒に笑ってきたわ」
了はふくれ、「かっこつけでバカだよ」とおもしろくなさそうな声を出す。了はカップ半分ほど残っていたコーヒーを一気に飲み干した。
「よし、結婚にはふたりとも前向きってことだな」
「具体的なことを話せるタイミングじゃなくなっちゃって、残念だったわね」
「どうせ父さんは、そういう話ははっきり語りたがらないよ。優れた経営者も、家じゃただの偏屈親父だよね」
その言いかたが完全なる他人事だったので、私は釘を刺した。
「あなたもいずれ、同じことを言われるようになるわよ」
了は生真面目に、その可能性について頭の中で検討したらしく、真剣な顔で宙を見つめ、「ほんとそうだね」とつぶやいて、また私を笑わせた。
ようやく三人がそろってゆっくり眠れる夜が訪れるかと思いきや、了はまた「事務所に行かないと」と家を出ていった。
今の了に、それをがんばりすぎだと言うことはできない。
玄関で見送る私に、了はキスをした。不甲斐ない自分を恥じているような、控えめなキスだった。
どんな了も好きよ。
そんな思いを込めてキスを返した。
* * *