冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
『今年もお世話になりました。狭間さんのところはモデルさんもまじめですし、とてもクリーンなおつきあいをしてくださるので、助かっています』

『あはは、ちょっと怖い事務所さんも多いですからね』

『え? 私はそんなこと申してませんけれど』


とぼけてみせると、了は一瞬きょとんとしたあと、たのしそうに笑った。

了が代表をしている芸能事務所『ソレイユ・インターナショナル』は、その名のとおり海をまたいで活躍する、小規模ながらも精鋭ぞろいと名高い会社だ。アジア、北米、ロシア、豪州に支部を持ち、現地出身のモデルを獲得したり、また日本のモデルを各地で活動させていたりもする。

ソレイユ・ホールディングスというグループ企業のひとつで、母体は人材派遣事業を営む近代的な会社だ。そのため芸能事務所によくある、頬に傷があったり背中に模様があったりする人たちの世界と無関係であるのも、業界で重宝されている理由だ。


『申し訳ありません、あまりゆっくりできないのです』と残念そうに言い、了は帰っていった。真紀が私のわき腹をひじで小突いた。

『気に入られたわね』

『そうみたいね』

『たくさん貢いでもらって、ついでに契約料を値切ってきてよ』


玉の輿の類の発想が出ないあたりが、さすが編集長だ。『Selfish』は『自分の人生を自分で生きる女性へ』を謳い文句に、十七年前に創刊された。

私は『どうしようかな』ともったいぶった返事をし、ふたりで笑った。

了の行動はストレートだった。その後すぐに会社のメールアドレスに連絡が来た。丁寧な言葉で綴られたメールには、【あなたを食事にお誘いしたい】とあった。

驚いたのは、その続きだ。


【仕事の話はあまりしないと思います。お嫌でしたらこの無礼なお誘いは無視してください。その際、これを書いているのはソレイユの代表ではなく、私、狭間了であることを斟酌していただけたら、こんなに幸いなことはありません】
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