冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「了……」


聞こえてきたのは、すうすうと規則正しい寝息。

私を抱えたまま、了が再び寝返りを打つ。抱き枕みたいに手足を私に絡めてくるので、羽交い絞めされているような状態になった。苦しい。


「ちょっと、了」


具合がいいのか、了はその体勢で落ち着いてしまった。どうがんばっても、了の匂いを胸いっぱいに吸い込むはめになり、顔が火照ってくる。自分より大きなだれかの体温をこんな近くに感じることなんて、しばらくなかった。

逃げるタイミングを探してじっとしているうち、了の右手が私の身体の上を動きはじめた。あきらかになにかを探している動きに、ぎくっとした。

案の定、手はブラウスの裾からもぐり込んでくる。背中を這う熱い手のひらに一瞬息が止まりそうになり、はっと思い至った。

もし了が私に対して"誠実"だったのなら、彼もあの、ホテルでの夜が"最後"なのだ。女の肌に、半自動的に焦がれて当然だ。

お互いの身体の接している部分が、燃えるように熱くなってくる。その熱が自分のなのか了のなのかわからず、慌てた。


「了ってば、ねえ」


身体の間に腕をねじ込んで、押しのけようと試みる。了がもごもごと、不明瞭な文句のような唸り声をあげた。そして腕の力が強まった。

どうしよう、これ。

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