Monkey-puzzle






総務から会場へと戻ると、既にセッティングの大部分は終わっていて「スタッフの皆さん、本当にありがとうございます!」と高橋が丁寧に挨拶をしていた。


「田所さん!」

「三沢さん…ありがとうございます。」

「田所さんにはいつもお世話になってるもの。こう言う時位協力させて?
それより、あの高橋くん、すごいわね!若いのによく働くわ!」


カラカラと笑う三沢さんに「良かったら、今日の打ち上げ、参加してください」と田所さんも笑顔を返す。

三沢さんに上司の相澤さん。
本当に良い関係を築いてるんだな…。

田所さんだけじゃない。亨も然り、だよね。

田所さんから亨に目を移したら、一緒に談笑してた橘さんと目が合った。

どう…しよう。
考えてみたら、この前の今日だから、少し気まずい。

けれど、そこは大人同士。微笑んだまま、軽く会釈をした私の元へ、橘さん自ら近づいて来た。


「木元さん、ありがとう。助かった。」
「い、いえ。私は何も…」


強ばる笑顔を何とか保ちながら返したけど、橘さんはクッと含み笑い。


「そんな逃げ腰にならないでよ。」


…分かってらっしゃいましたか。
そりゃそうだよね。『不器用』ってバレているんだもん。


「また、あのバーにでも飲みに行こうよ。あー…恭介も一緒に。」
「当然です。」
「何だよ恭介、聞いてたの?」
「智ちゃん、あり得ないから、こんな所で口説くとか。」
「や、口説いてないって!俺、マジで呪い殺されたくねーし。」


私を間に挟んだまま大の男二人のじゃれ合いが始まる。

終始楽しそうに渋谷と話す橘さんに少し零した溜め息。


『橘さんにもきちんと謝罪して、辞表を出すつもり。』


亨はそう言っていたけれど、橘さんは亨の話を聞いてどう思うんだろうか。
事と次第によっては、名誉毀損で訴えられてもおかしくない。

それも覚悟の『辞表』なんだろうけど。

私は当事者なのに、両者が傷つくのを見守るしか出来ないのかな…。

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