その花が永遠に咲き続けますように
「うん。最初に話してくれてありがとう」

笑顔でそう返したつもりだけれど、


「皆に気を遣わせてしまいそうだなって思ったら、なかなか言い出しにくいけど」


永君のその言葉に、また視界が滲む。


永君もいっそ泣いてほしい。そうすれば、私がこんなに泣かなくて済むかもしれない。永君が泣かない分も私が涙を流しているんじゃないかと思うくらい、涙が止まらない。

涙を流したのは久し振りだ。日奈にいじめられた時は泣いたけれど、他人と関わらないことを決めてからは、嬉しいことも悲しいことも何もない日々を送っていたから、笑うことも涙を流すこともなかった。



「気なんて、遣わないよ……。寧ろ、もっと気遣えって思われるくらい、これから皆でたくさん、キツイ練習していくんだから……」

「はは。そりゃ怖い。でも……それも楽しみではあるかな」



その後、花火が終わるのと同時に私達は園を後にした。



ーーそして、seedsとして初めての練習の日、永君は病気のことを三人に打ち明けた。

三人がどういう風に感じたかはわからないけど〝いい思い出が出来るように楽しもう〟と皆で決めた。



だから私も……三人に、自分の中学時代にいじめに遭っていたことを……話した。



これを話したら、皆が離れていってしまうんじゃないかと怖かった。誰とも関わらないで生きていきたかった自分が、こんな風に感じている変化にも驚いた。



だけど荻原さんが泣きそうな顔で言った。



永君も咲ちゃんも話してくれてありがとう、と。



きっと、過去を話したことは間違っていなかった。



これから、永君の為に、最高の音楽を奏でたい。



まだ始まったばかりだけれど、タイムリミットはすぐ近くまでやって来ているーー。
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