その花が永遠に咲き続けますように
一瞬、本当に目の前が暗くなった気分になった。

言わないで、と言われてしまった。どうしてだろう。悪いことじゃないはずなのに。


戸惑う私に、彼は更に続ける。


「酷いこと言ってごめん。俺、咲のことが好きだよ」

「え……?」

「一緒に音楽やってるうちに、いつの間にか好きになってた。弱いところも含めて、俺が支えていきたいって思った……俺がこんな身体じゃなければ」


彼の声はどんどん弱々しくなっていって、私は何て答えたらいいのかわからなくなっていく。


私から視線を逸らす彼の顔は、無理やり笑っているようにしか見えない。



「年内には身体は殆ど動かなくなって、車椅子での生活になる。今まで普通にしていたことも、当たり前の生活も、一人じゃ出来なくなる。そんな俺じゃ……咲のこと、支えること出来ないから」


……そんなことない。永君が側にいてくれるだけで、微笑んでくれるだけで。それだけで私は幸せなの。他には何も望まない。だからそんなこと言わないで。




……そう思うけれど、きっとそんなこと言ったって彼をますます苦しめるだけだ。



彼が言わないでほしいなら、私はもう何も言わない。



「わかった。でも、武道館には絶対に来てね。約束だよ」


私がそう言うと、彼はほっと安心したように息を一つ吐いた。


「うん、約束。兄貴に車椅子押してもらって、必ず行くから」


練習頑張るね、と言って私は笑った。


決して嘘の笑顔なんかじゃない。だってきっとこれが正しいから。



正しいから……。
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