その花が永遠に咲き続けますように
私がそう言うと、三人は「え?」と声を揃えて一斉に私に視線を向けた。


「それは構わないけど、珍しいな。咲が練習休むなんて」

武入君の言葉に、私は「うん……」と答える。


来週のステージを成功させる為には、今は何よりも練習が大事だということはわかっている。だけど、ステージを成功させたいからこそ、〝今日の決意〟を揺らがせる訳にはいかない。



「大事な用事なんだ。武道館のステージの上で、自分の気持ちに嘘をつかない為の」



私のその言葉に、武入君も瑠夏も首を傾げる。
それで良かった。無駄な心配掛けさせたくないから。
だけど、皆に背を向けてドアノブに手を掛けた私に、荻原さんが「咲ちゃん」と声を掛けてくるから振り向くと。



「辛い思いをしたら、いつでも私達に言ってね」



と、そう言ってくれた。
荻原さんは、私がこれからやろうとしていることに気付いているのかもしれないなと思った。



「大丈夫だよ。気に掛けてくれてありがとう、荻原さん」

「咲ちゃんってさ、私の下の名前、知ってる?」

「え?」


何だろう急に、と思いながらも「恵那子でしょ?」と答えると。



「そうだよ。下の名前は、荻原さんじゃないんだよ」


それは当前すぎる発言だけれど、彼女が何を言いたいのかは、理解出来た。


私も、とっくにそうしたかったのに、ずっとタイミングを伺ってしまっていた。



「うん。いつも気に掛けてくれてありがとう、恵那子」


私がそう言うと、恵那子は満足そうに笑った。

これから私がやろうとしていることは不安だらけだけれど、この笑顔を見たら勇気が出た。


私は一人じゃない。改めてそう思えたから。
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