その花が永遠に咲き続けますように
「相澤さん、こういうの得意なの?」

「字も綺麗だね」

今まで一度も話したこともない子達が何故急に話し掛けてきたのかはわからないけれど、恐らくいつも一人で作業している私に気を遣ったのだろう。


…….多分、いつもの私なら「別に」とか「さあ」とか素っ気なく返したのだろうけれど、



「……ありがとう。そんなに上手じゃないと思うけど」



素っ気ない言い方には変わりなかったかもしれないけれど、ちゃんと返した。
自分を少しでも変えようと文化祭でステージに立つことを決めて、永君だって一緒にやってくれているのに、自分を変える努力を私がしないのは駄目だ。
相手のことをすぐに信じるのは無理だけれど、少しずつでもいいから、今までの自分を変えたい。



その子達は、その後すぐに自分達の持ち場に戻っていった。

なので私も自分の作業を再開しようと筆を動かす……のだけれど、


「相澤さんっ! ねぇねぇ相澤さーんっ!」


……と、今度は別の人に、やたら大きな声で名前を呼ばれる。

手を止めて振り向くとーー振り向かなくても相手はわかっていたけれどーーフリフリのメイドさんが私の方へ小走りで向かってきていた。


「今、見てたよっ! クラスの女の子達と話してたねっ! 私は何だか嬉しいよっ!」

まるで母親かのような台詞に戸惑うけれど、本当に目を潤ませて震える声でそう言うのだから、何て返事をしたらいいか全くわからない。
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