その花が永遠に咲き続けますように
7/15

ーー何だか、非常に気まずいことになっています。




「相澤さんって、歌どこかで習ってたの?」

「歌手目指してるの?」

「ステージで歌うとかちょっと意外だった。でも上手かったよ〜」



……文化祭でのステージが終わってからもう三日経つのだけれど、連日こんな感じだ。



今のところは罵倒暴言を浴びせられることはなく、あのステージを観た人達は皆、あの時の歌を褒めてくれるのだけれど……


どうやら私が堂々としていられるのは、やっぱりステージの上だけみたいだ。ここ最近は少しずつクラスメイト達とも会話をするようになっていたとはいえ、日奈に裏切られていじめられてから一年以上、家族以外の誰ともまともに話してこなかった私には、教室の自分の席をこうも大人数に囲まれて質問攻めされるこの状況では上手い返答が出来ず、俯いて硬直することしか出来ない。



そうやって困っていると、いつもサッと登場して口を挟んでくれる人がいる。


「はいはい! もうっ、皆で囲んだら相澤さんが困っちゃうっていつも言ってるでしょー!」


荻原さんだ。
分解準備期間中、いつも一人でいた私を何かと気遣ってくれた彼女は、文化祭が終わった後もこうして私をフォローしてくれる。


それ自体は有難いことなのだけれど……




「でも! 何度も言うけど相澤さんの歌は超ーー素敵だった! 声綺麗だし、迫力もあって、こう、身体中にビリビリって電気が走るような、そんな感覚になった! 次のライブはいつ⁉︎ 絶対観に行くから教えて! ねぇねぇ!」


……そんな彼女が、一番グイグイ来る存在なのだ。本人にとっては無自覚の天然なのだろうなって思うけれど。
< 68 / 183 >

この作品をシェア

pagetop