その花が永遠に咲き続けますように
その後、私の携帯に入っているrowdyの他の曲も彼に聴かせたりしていた。
どの曲も彼は気に入ってくれて「いいな」って言ってくれる度に嬉しく思う。


気が付いたらそれなりに時間が経っていて、空の向こうがほんのり赤く染まり始めていた。


「あ、ヤベ。俺、バイト行かないと」

そう言うと彼は立ち上がり、近くに止めてあった自転車に跨る。年季の入った、使い込んでいそうな自転車だった。


「急に話し掛けて悪かったな。電車の時間とか、予定とか、大丈夫だった?」

「う、うん……」

「良かった。じゃあな」

「あ……っ」

思わず呼び止めようとしてしまったけれど、それよりも早く彼は自転車を漕いでその場を去っていってしまった。


名前すら、聞けなかった。


だけど、それでいいのかもしれない。
私、あの人と友達になりたいとでも思ったの? そんなものいらない。一人でいた方が絶対に楽なんだ。
思いがけず楽しいと思える時間を過ごしてしまったけれど、今の時間を再び求めようと思ってあの人に関わったら、後悔しないとも言い切れない。
呼び止めなくて良かった。


彼の体温が少し残るヘッドホンを再び自分の耳に着け、違う曲を聴きながら駅へと歩き出した。
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