珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「そんなにガッカリすることなのかい?…あっ、もしかするとマスターは、愛花ちゃんに『ほの字』なのかい?
…そうだろうねぇ、あの子は本当にいい子だもんね」


なかなか自分を見せない子だけど…と微笑みを浮かべ、何なら自分が後押しをしようか?と言い出した。


「それは遠慮します!」


自分を取り戻したようにキッパリと断ると、詰まらなさそうに「ちぇっ」と舌を打つ。


「第一、俺がいつ彼女に惚れてると言いましたか?俺はただ単に、彼女に興味があるだけです」


全く…と呟くと。


「その興味があるというのが惚れてるということだろ。本当にいい大人のくせに素直じゃないよ」


悪態を吐き返され、ズズーッと一気に珈琲を飲み干した山本さんは、また来る…と言って立ち上がった。


一応会計の場所には向かい、それでも財布を出さずに俺の方を見直して。



「いいですよ。今日は」


と言うか、今日もだけどな。


「おや、そうかい。悪いね」


ニコッと笑うと、意気揚々と出入り口に向かいだす。
俺はその背中を見送りながら(小悪魔め!)と思わずにはいられなかった。


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