珈琲プリンスと苦い恋の始まり
その声に振り返って見れば、カウンターの上に置いてあるカップの中身は空っぽで、底の方には彼女の涙と思える液体が少しだけ溜まっている。

それを見つけると、俺はまた余計に胸が切なく感じてしまい……。


ぎゅっと押し寄せてくるものを受け止めつつ、足を前へと踏み出した。


外へ出ると前を歩く者は誰もいなくて、背の小さい彼女は肩を窄めながら隣に立っていて、その歩調は二人一緒で変わらなくて、いつまでもずっと、そのまま歩き続けていきたい…と思えるような安心感に満たされていた。



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