珈琲プリンスと苦い恋の始まり
再生を願って
最終便が空港に着いたのは、午後九時半過ぎだ。
其処からタクシーを飛ばしても、店まではざっと二時間以上はかかる。

俺は凝り固まった肩や背中を動かしながらゲートをくぐり、ロータリーで自分の荷物を待ち受けてから空港の出口へと向かいだした。

こじんまりとした空港内には人気も少なく、最終便で帰ってきた人達は全員、疲れ気味な顔をしている。

俺はその中でも自分が一番疲れた様な気分で、ゴロゴロと気怠い音を響かせながらスーツケースを引っ張っていた。


「…あっ、貴方は」


向かい側から来る男性が立ち止まり、俺は(誰だ?)と目を向けた。


「ああ…」


相手のことを直ぐに思い出して、同じ様に立ち止まる。


「その節はどうも」


頭を下げて近付き、どうして此処に?とお互いに言い合った。


「私は今から女房の迎えです」


これが出来ないもんですから…と、ハンドル操作の真似事をする。


「こっちは今、出向先から帰ってきたところです」


長旅でした、と言うと「お疲れでしたね」と労われた。


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