珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「ただいま」


店の前で古民家を見上げて挨拶した。
赤茶色の屋根瓦の隙間から雑草が伸び、その先にオレンジ色の花を咲かせている。


俺は鍵を開けて店の引き戸を開いた。
中からは珈琲の香りがふわっと漂い、ようやく我が家に帰り着いたような錯覚を感じた。


店内から幟を出すと坂道を下る。
それを道端に並べてオープンを知らせ、中に客が来てくれることを待ち望んだ。


第一号でやって来たのはあの人だ。

俺はその姿を目にすると顔を綻ばせ、「おはようございます」と声高らかに挨拶した___。


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