珈琲プリンスと苦い恋の始まり
自分達もまだそういう場面には出会ってないと残念がる。
俺は情報を教えてくれた観光客に「行ってみましょう」と答え、「また店にも立ち寄って下さい」と見送った。


その日は折角勧められたしな…と思い、早目に店を閉めた。

昼間聞いたビュースポットを目指して車を走らせていると、前方の路肩に見覚えのある車体が停まっているのが目に入った。



(あれは…)


一瞬、別の人の車だろうと思った。
金曜日の夜に見た車と同じ車種で同色だが、彼女のではないだろうと考えたんだが……。


(まあでも、ちょっとだけ寄るか)


急ハンドルを切り、反対車線の路肩に車を寄せる。
車外へ降りると中の様子を窺ってみたが、彼女の姿は見えなかった。


(やっぱり違う人の車か…)


運転手は何処だ?…と、金曜日の夜にツレなくして逃げた相手がいるかどうかを探しだす。
車が停まっている車線側には一軒の食堂があるだけで、反対車線には岩場の海岸が広がっているだけだ。


(海か?)


車の行列が途切れるのを待ってから渡り、道路の上から岩場の広がる海岸を眺めてみた。

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