珈琲プリンスと苦い恋の始まり
カウンターに回り込んで来た彼がそう言う。
私は無言でコクンと頷き、マグカップを両手で持ち上げた。

鼻腔をくすぐる香りに、スン…と息を吸い込む。フーッと息を吐いてから口を付けると、口腔内にまろやかな甘みが広がった。



(えっ…)


珈琲よね?と目を見張る。
呆然とカップの中を見つめる私を見て、彼がクスッと笑いかけた。


「驚いた?甘いだろ?」


私の表情を読み取ったみたいに聞いてくる。
こっちはその言葉にうん…と頷き、もう一度確かめるように口に含んだ。


微かな苦味が甘さの後に感じる。
けれど、どちらかと言うと甘さが勝ってて、フラックのまま飲んでも平気だった。



「美味しい…」


素直に感想を言うとフ…と微笑みが返る。
嬉しそうにしてる彼の態度に恥ずかしさを覚え、さっさと用件を済ませてしまおうとした。



「写真……見るんでしょ」


カウンターの上にカメラを乗せると、彼は「いいのか?」聞いてくる。
自分で見たいと言ってたくせに何?と思い、「自由に見れば?」と言い返してやった。


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