惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
そこには気難しい顔をした陽介さんが立っていた。一瞬たじろいだけれど、なんとか笑顔を持ちこたえる。
「……あ、えっと……手、手が治ったんです。綺麗にくっついてますよってお医者様にも言われました」
ほらとばかりに左手を陽介さんに見せる。
陽介さんはチラッと手に視線を投げかけてから、再び私を見た。
「それで、これはどういうことなんだ」
さっきモニターに映したように、私の置き手紙をグイと突き出す。
「……はい。もう治ったので、陽介さんにご迷惑をお掛けしなくて済みます」
「つまり?」
陽介さんの眉がピクリと動いた。
「一ヶ月間、恋人のふりをしてくださってありがとうございました」
「……ふり?」
今度は眉間に皺が深く刻まれる。