惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「それって、私の知ってる人?」
「……工藤副社長」


待ちきれないといった様子で繰り返す琴子に向かって口元に手をあてて小さい声で言うと、彼女は「工藤副社長!?」と盛大に驚いた。


「本気で言ってるの!? 冗談でしょ!?」


あまりに大きな声で聞き返す琴子に向かって人差し指を唇にあて、「しー!」とする。
琴子はハッとして回りを見て、自分に集まった視線に対して頭を下げた。

でも、琴子が驚くのも無理はない。みんなの憧れの的である副社長が、突然私の彼氏になったのだから。


「なにをどうしたらそうなるの?」


眉間に皺を刻み、琴子が信じられないといった表情をする。


「怪我をさせたお詫びになんでも願いを聞くって言ってくれて」
「怪我のお詫び? その怪我、副社長のせいなの?」


目を丸くする琴子にそのときの状況を説明する。

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