ふたつのハート

「じゃあ!奈々瀬さん、山代くん、また明日…」

「それじゃあ、バイバイ!」

龍咲さんは、クラス委員の打ち合わせがあるそうで、私達は先に帰ることに、でも、山代くんとまた2人だけ、ちょっと気になる。

「…あ~あ…」

校門を出ると山代くんがまた、大きなため息をつきながら、道に転がっていた小石をコロン、て軽く蹴飛ばした。

ご機嫌ナナメですか?…

「なんかさぁ…やってらんないよ…セイカばっかり…」

「でも、セイカくんて女嫌いなんでしょ?…
なんか、可哀想…」

「可哀想、って?」

「だって、ある意味、誰かを好きになることが出来ないってことでしょ?、もしかしたら一生、そういう経験とかも出来ないとしたら、なんか可哀想だなぁって、思ったの」

「そう考えると、たしかに…そうかもな…」

「誰かを好きになる事って、ふつうの人なら必ず一度や二度?いえ、それ以上あるかもしれない、けれど、好きって、言われることはないと思うの…だから…」


「ああ…俺も好きになったことは何回もある、けれど、好きって言われた事は…一度も…?ん…あッ!あった!!」

「…え?…すご~い!」

「…さっき言われた…ちびちゃん?君から!…
大好き!って!
もちろん、マジで、受け取っていいんだよね!」

え?え!えーーーーッ!!

「あ、あ、あ…あわわ~!…ご、ごめんなさい…話の流れ?…はは…つい…あ、あの…あれは…」

「がーん!…ははは、冗談だよ…マジちびちゃんて楽しいわ…」


「もう、山代くんて、ふざけてばかり…だからね、好きって言われたらどんな気持ちだろうなぁって、私はないから、やっぱり嬉しいのかな?…」

「嬉しいに決まってる…もし、それが…」

「ん?」

「あの時…

そう、雨の日…

見た事ある子だなぁって思って、ちびちゃんて、どっちかってゆ~と、目立たないほうじゃん!だからさ、名前、なんてーの?…でも、あの時、セイカがさ、ちび、って言ったんだよな…


セイカくんが?


あいつ知ってたのかなあ?

まさかな、ちびちゃんがちびっこだったから、見た目でもってちびって言ったのか…

まぁどっちでもいいか

(よくない!)

その時さあ、覗きこんで、アップでちびちゃんを見た時ドキュン!て思ったんだ

ちびちゃんて…

かわいいなぁって…」


「え?…」


「マジに…」


どうしたの?

山代くん

まじめな顔で

山代くんらしくないよ

いつものように

ケラケラって笑って


ホームに電車が入って来た時だった


山代くんにいきなり…私に


キス…を…した?


「好きだ…」


なっ…何で!!?


あっと言う間の出来事で…

その後、電車に乗って…

でも、山代くんも私も一言もしゃべらず、

ずっと、窓の外を見ていたのだけは


覚えている。
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