拾い恋(もの)は、偶然か?



---本当に、許せない。


「翔吾さんのどこに不満があるのよ。衛じゃなくても私なら乗り換えるなんてありえないわ。」

「……どんだけ自信あんだよ。」


とりあえず周りの視線が痛いから歩き出すと、衛は当たり前のようについてくる。


「ついてこないで。」

「別に俺も暇だからこっちに歩こうと思ってるだけだし。」

「うざ。」

「口悪いなぁ。こんなお前知ったら、兄貴も幻滅なんじゃない?」



いちいち癇に障る言い方をする奴だ。睨みつければ、挑発的な笑顔でまっすぐに私を見つめ返してくる。

ほんとに……。


「松崎さんって、趣味悪い。」

「あ?」


申し訳ないけれど、私には無理だ。こんなガキみたいな奴、フリーでもごめんだ。


睨みつけてくる衛にそっぽを向いて、少女漫画コーナーに向かう。それでもついてくるものだから頭にきて、あのコーナーへと入り込んだ。


「っっ、お前。」


衛が小声で呼んでくるけど、やはり入りにくいらしい。ふふん馬鹿め。人がそれなりにいつもいて、なおかつこれらを読むのはほぼ女性。そして男が堂々と入れないコーナー。それこそが……。


「入ってみなさいよ。ボーイズラブの世界へ。」


男性にはハードルの高い場所だ。今もほら、コーナーの入り口でこっちにジェスチャーを送っている衛が、変な目で見られている。



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