君と、世界が変わる瞬間に。









ー…



「落ち着いた?」


「…うん。…ごめん」


「そこで謝らなくていいのにっ」


五十嵐君は泣き腫らした目で笑った。


「…これからは友達として、仲良くしてくれる?」


「雨野はそれでいいの?」


「うん」


きっと五十嵐君とはいい友達になれると思うから。





「…あ、あのさ。…五十嵐君…」


「うん?」





「加藤諒太と連絡とってたり…する?」




そう聞くと彼は苦痛に耐えるかのような顔をした。


「…とってないよ。…でも、加藤の友達となら…まだ連絡はする」


「そっか」


「…加藤に逆らえないって言うの…なんか卑怯ない気がするよな。…」


「…そうだね。…でも、しかたない」


しかたない?…そんなわけないじゃん。受ける方からしたらみんな加害者。しかたなくなんかないんだ。

それなのに五十嵐君を覚えてないって言うのは、理由があった。五十嵐君は私に1度しか嫌がらせをしていない。それと、もうひとつ……



「あ、そろそろ教室戻る?…1時間目終わっちゃったけど」


「そうだね」


ーガラガラー


「あ、私…渡り廊下渡らないと。ここで」


「うん、また」


「またね」






…もうひとつの理由はね。



五十嵐君がいた時……私が嫌がらせを受けた小学6年の時に比べて、彼が中学受験していなくなった中学1年の時の方がずっとずっと苦しかったからだよ。

小学生の時のことが可愛いくらいに思えるほど、辛くて…悲しくて…。

だから、覚えていなかったんだと思う。


そして、許した理由について。本当は許すつもりなんてなかった。一生後悔すればいい。って思う。…昔はね。


でも今は、彼が後悔して苦しんだならそれでいいった思っちゃう。きっと、夕凪君のおかげだ。夕凪君のおかげで私は少しだけ変われたから。



ーピロンー


「びっくりしたぁ…なに?五十嵐君…?」


先ほど連絡先を交換して別れたはずの彼からメール?



《余計なことかとおもったんだけど………雨野、もし加藤に関わろうとしてるならやめといたほうがいい。…あいつは今でも変わってない》










< 141 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop