私の本音は、あなたの為に。
私の秘密
そして、土曜日。


「勇也、こっち!早く観たいわね、あの映画!」


私とママは、家の近くのショッピングモールにある映画館へと向かっていた。


ママは、傍から見ると楽しそうに騒ぐ女子高校生の様だ。


そして、現在女子高校生である私は、傍から見ると男子高校生だろう。


洋服は、女子らしさを全て封印した、ロゴのついた地味な半袖にこれまた地味なジーパン。


背負ったリュックは、どこにでも売っていそうな男子用のもの。


そう、兄のものだ。


本当ならもっとおしゃれをしたい所だけれど、仕方が無い。


「待って!…母さん、はしゃぎ過ぎだよ…。ああ、恥ずかしい」


「勇也ったら…!あなただって楽しみにしてたじゃないの!」


私とママは、歩きながら笑顔でそう会話を交わす。


これも傍から見ると、親とその息子の楽しい会話なのだろう。


本当は、私が女子だという事を知らずに。


そして、映画館に到着した私達は、早速定番であるポップコーンを買い、前もって予約した席に座った。



私達が見た映画は、率直に言ってかなり感動するものだった。


その映画を簡単に説明すると、女子高校生が記憶障害のある同じクラスの男子高校生に恋をするお話だ。
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