私の本音は、あなたの為に。
図書室
「行ってらっしゃい、勇也。気を付けてね」


ママが玄関から顔を覗かせ、私に手を振る。


「じゃあね、母さん」


いつもの様にママと挨拶を交わした私は、家を出た。



あの日から数日が経った月曜日。


今日は視力検査と聴力検査がある為、ジャージ登校だ。


私は、ジャージ登校の日が好きだ。


何故なら、この格好ならママに


『あら、勇也、女の子っぽい格好してるわね』


と言われなくて済むから。


とはいっても、不思議な事に私が制服でスカートを履いていても、ママは疑問を抱かない。


そこだけ、私が女子だということを認めてくれているのかもしれない。


そう、思いたい。



8:25までに学校に着けばいいけれど、私は8:05に到着してしまった。


(ちょっと、早すぎたかな…)


そう思いながら教室のドアを開けると、そこには既に五十嵐の姿があった。


けれど、勉強をしたり本を読むわけでもなく、ただ頬杖をついてどこか宙を眺めているだけ。


「おはよう…」


私が控えめに挨拶をすると、


「おっ!?…安藤じゃん、おはよ」


と、かなり驚かれながらも挨拶が返ってきた。


「早く来て、何やってたの?」


私はリュックを机の横に掛けながら質問をする。


「んー…ぼーっとしてた」


彼は目を擦りながら返事をする。
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