私の本音は、あなたの為に。
全ての始まり
時は遡り、3年前。


私が、中学1年生の時。



兄が死んでから、2週間が経った。


まだ少しだけ、兄が死んだという実感が湧かない。


それでも、私達は少しずつ前までの暮らしを取り戻していた。


「ママ、髪の毛切って来る」


今日は土曜日。


ずっとロングヘアだった為、これから来る夏に備えて髪の毛を切ろうと思ったのだ。


「うん。行ってらっしゃい、優希」


ママは見ていたテレビの音量を小さくし、私に向かって手を振った。


兄の事を溺愛していたママも、少しずつ元の生活を取り戻して来ている。


兄だけが居ない、元の生活を。



兄も通っていた美容院に着いた私は、椅子に座ってすぐさま注文をする。


「肩までの長さに、髪の毛を切って下さい」


「はい。肩までですね」


私の言葉を確認した美容師さんは、すぐにハサミを手に取った。


みるみるうちに、私の長かった髪の毛は床に落ちていく。


胸より少し下だった私の髪の毛は、どんどんと短くなっていって。


(肩までが丁度いいな)


鏡に映った自分を見ながら、私はふっと笑う。


伸ばすのはいいけれど、肩以上は切りたくない。


後ろで1つに結べなくなると、邪魔でしかないと思うから。


それに、花恋に言われた事を守り続けたかった。


“髪の毛は、女の命”


という、あの言葉を。
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