副社長は今日も庇護欲全開です
「えっ? でも……」

二つ返事なんて、とてもできない。私はモール内のレストランで十分だけれど、副社長の好みじゃないのかな……。

モール内のお店なら、自分の分は出せれるのだけど……。

いくら相手が副社長だからって、簡単に甘えられない。お店を提案し直そうかと思ったとき、彼が私の心を察したように言った。

「あそこの店なら、周りを気にせず仕事の話もできるから。ここだと、誰に聞かれるかも分からないだろう?」

「そういえば、そうですよね……」

たしかに、モールのお店は賑やかなものばかりだし、ビジネスマンも多い。

もしかしたら、同業他社の人もいるかもしれないんだ……。まして、私の改善案はまだ水面下で進めている業務。

簡単に聞かれてはいけないってこと。

「遠慮をする必要はない。きみと偶然会うことだって滅多にないわけだし、今夜が特別だと思ってもらえたら……」

副社長の言葉に、甘えさせてもらおうか。彼の言うとおり、こうやって偶然会うことはそんなにない。

それになにより、副社長と話がしたいし……。

「はい、ありがとうございます。お言葉に、甘えさせていただきます」
< 31 / 123 >

この作品をシェア

pagetop