副社長は今日も庇護欲全開です
「えっ⁉︎ あの、私はここで失礼します」

二次会は、最初から行くつもりはない。だから、帰る気満々なのに、島本さんは強引に私の腕を掴むと歩き出した。

本音は、すぐにでも彼の手を振りほどきたい。だけど、静かな音楽が流れるダイニングバーで、騒ぎ立てるわけにもいかなかった。

「帰るの? それはダメだよ。せっかく、真美香ちゃんが気を遣ってくれたのに」

肩越しに振り向いた島本さんは、ニッと口角を上げている。その表情に、私は途端に緊張が増した。

「真美香が気を遣ったって、どういうことですか?」

店を出ると、ホテルのロビーが広がる。中央には噴水があり、宿泊客やレストラン利用者が行き交っていた。

でも、真美香たちの姿がない。動揺しながら辺りを見回していると、立ち止まった島本さんが、私のほうに振り向いた。

「真美香ちゃんに、もっと陽菜ちゃんと仲良くしてやってて言われてさ。俺も、きみがタイプなんだよね」

「え……? そ、そんな。困ります」

島本さんは長身で整った顔立ちをしていて、さらに外資系証券会社に勤めているような人。

女性なら、憧れる人がいてもおかしくない人だけれど、私は苦手だな……。

そもそも、会ってまだ二時間程度で、どうしてこんなに積極的なんだろう。
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