副社長は今日も庇護欲全開です
「でも、副社長もです。私服姿が新鮮で……」

ネイビーのシャツに、黒の薄手のジャケットを羽織っている。

同系色のパンツに、足元は手入れの行き届いたこげ茶色のローファー。

どれも上質で、きっと有名ブランドの物なんだろう。嫌みなく着こなす副社長が、普段とはまた違うかっこよさを醸し出していた。

「そうだよな。俺の私服姿を、見ることなんてないもんな」

アクセルを踏んだ副社長は、軽快に車を走らせる。目的地は決まっているのか、迷いなく国道を走っていった。

「はい。こうしていると、つい真中副社長が“副社長”であることを忘れそうです」

それでも、目を引くほど素敵な人に変わりはなく、つくづく自分がこうやって一緒にいることが不思議でたまらない。

すると、副社長は口角を上げて笑みを浮かべると、信号待ちで止まったと同時に私に視線を向けた。

「むしろ、そう思ってくれたほうが嬉しい。仕事が終われば、俺と下村さんは対等だろ?」

「た、対等だなんて。さすがに、そんな風には思えません」

思わず両手を振り、慌てて否定する。それでも副社長は、笑みを崩さず再び車を走らせた。

「対等だよ。だからきみが、不必要に遠慮がちになるのは、俺としては少し寂しい」
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