くまさんとうさぎさんの秘密

友情

by 柳瀬 隆司
リハーサルが終わって、部内のテンションは上がり切っていた。
宇佐ちゃんは、熊谷に迎えに来てもらって、恥ずかしそうに帰って行った。
当日も、宇佐ちゃんは熊谷がお迎えということなので、みやこには、俺が送ってやることを申し出た。
みやこは、正義漢だ。だけど、誰よりも女の子だ。ずるいところがない。その分だけ、傷つきやすいところがある。
「みやこ、今日も、サイコー。」俺は、彼女を抱き締める。彼女は、リハーサルから、俺が作った衣装を着てくれている。
昨年は、もうちょい露出が多いのにしたけど、今年は、スタイル生かしつつ、隙のない服を着せたかった。昨年は、何一つ、みやこのことなんか分かってなかったと思う。
「バイク、前に持って来ようか?」
「この後、ちょっと機材のことで打ち合わせがあって、それから部室によるから、今日はいいよ。」
「何時まで部室に残るの??」
「部室に大した用事はないんだけど。。帰るとこないから。」
彼女はやみあがりだ。部室には、寝泊まりするためのまともな設備はない。
「そんじゃ、俺も、今日は、部室によっていこうかな。。」
ここで提案するのは何だけど、俺は、二人になったら、俺んちにこないか誘うつもりだった。
「了解」
「晩飯、何か買っといてやろうか??」
「甘える。何でもいい。後でお金払うよ。」
みやこは、いそいそと他の人のところに行ってしまったので、、俺は、軽食を買って、一人で先に部室に戻った。

ところが、だ。部室には先客がいた。。
「ここのところ、珍しいことつづきじゃん。きよし何してんの??」
俺は、俺の願いを理解してほしかった。
「忘れもん取りに来た。」と、奴は答える。
「あっそ。見つかった?コーヒーでも飲む??」
「俺、お前に話があって来た。どっか、食べ物屋か、俺んちか、お前んちで話せないか??」
そんなの、嫌に決まってるけど、言葉は選ばなきゃいけないと思う。
俺、こいつにやられるのだけは絶対に嫌だ。
「無理だよ。後ろ向くなよ。お前は、自分に期待してくれてる人間を、もっと大事にしろよ。」と、俺は言った。
「お前さ、何で俺に栞のこと紹介したの??俺が、どんだけ傷ついたか分かってる??人の気持ち分かってて、もてあそんでんじゃねーんだよ。お前って、優しくって、それで、ゆっくりだけど、俺の気持ちも受け入れてくれてるんだって。。お前に迷いがあるのはしょうがない。そりゃ、男に告られて、とまどうのもびびるのも、しょうがないけど、絶対に無理強いなんかしてこなかったつもりだ。お前の戸惑いも、迷いも、全部全部大事にしながら、片思いしてようって。。」
「俺は、お前に好き勝手されるたびに、友達なくした気持ちだった。いつまでその話引きずるつもりだよ。」と、俺は言った。
無理強いがなかったなんて嘘だ。
「やめてって言ってもやめてくれなかっただろ。。」
「体は、やめてって言ってなかった。」と、奴は言った。
言っても無駄だ。そう思いながら、俺は、ちゃんと話してこなかった。
「嫌々言いながら、俺、はっきり言えてなかった。合意と思われてもしょうがなかった時があったのも認める。お前と友達になれて、友達は大事にしたいって思ったんだよ。それがこういう形でめちゃくちゃにされて、俺だってショックだったんだ。しかも、お前、男相手のセックスめちゃくちゃうまいし、そのことだって、重ねてショックだったわ。俺にその気があったからかもしれない。でも、体落とせそうだったって、やめてはやめてなんだよ。俺は、お前と、体の関係を望んでない。」
きよしは、歯をぎりぎりと食いしばった。
「お前、俺のこと好きだったよな。」
俺は、もう、正直に行こうと思ってた。
「うん。好きだった。好きだったよ。」
「俺、どこで間違ったの??」
泣きそうな顔。。
「俺のこと、信じてくれなかった。」と、俺は言った。
奴は、俺の体に手をのばした。
「もう一回やりなおしたいんだよ。」抱きしめられる。
「俺は、始めたくなかったよ。それ以上はやるな。」
きよしは、俺が初めてじゃなかった。誰がこんなことを教えたのか、俺だってちくちくしたけど、ショックだったけど、でも、奴にそれをぶつけるようなことはしてこなかった。

奴は、キスがうまい。それから、無理やり男の体昂らせるのもうまい。
抱きしめられたら、ひとたまりもない。
唇解放されたと思ったら、容赦なくあちこち刺激される。
「いやだっ、やめろよっ!!」
でも、今日は奴の方が泣きそうだった。
「許してくれよ」奴の声がかすれる。
押しのけようとして思いっっきり押したら、奴の目つきが変わった。
「やってくれるじゃん。」
めちゃくちゃだ。思うようにならない苛立ちをぶつけるようにされるのは嫌だった。
だけど、抵抗する気力もなく、その後は、がっちりと唇ふさがれたままになった。
昂らされて、イケなくて、涙が出そうになった時に、また、唇が解放された。
「お前にこういうこと教えたの誰なの?」ふと、俺は尋ねた。
「そんなこと、どうでもいいよ。」と、奴は、俺の横腹をつねった。痛みで、口がきけなくなった。
「やらせろよ。」
「無理。無理だよ。もう、本当にやめて。」

その時、、部室の戸が開いた。

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