くまさんとうさぎさんの秘密
by 前嶋 篤
部屋の中には、煙草の煙が充満していた。
いったん吸い出すと止まらなくて、ものすごい臭いがしてることは分かっている。。
ずっと誰かと一緒にいたから遠慮してたし、煙草なんか忘れるくらい夢中になってた。
必死になってたけれども、だんだん歯車が合わなくなって、ここ2ヶ月ほどご無沙汰だ。

人生で、こんなにイラついたことも、思い通りに行かないこともない。。

人を動かすということについて、自分は長けているつもりだった。でも、それは、、お客さんに「良かった」と思ってもらうとか、従業員に「俺が実力出せば一流」と思ってもらうとか、相手と目的を共有出来て成り立ってる事だった。

今の俺は、ガキだ。
よく、できちゃった結婚迫って振られる若い女がいるし、店でもそういう子入れたことがある。
ひとみなんか、孕んじゃえばいいと思って、隙があればやってやった。抵抗なんか形だけで、ひとみも受け入れてるように見えたから、底なし沼のように、夢中になった。
だから、最初にちょっと遠ざけられたときは、期待もあった。
でも、ただ遠ざけられただけに終わった。
体調が悪いというから、優しくもしてみた。けれども、ただ俺を遠ざけるだけで、甘えてくれる訳でもなし、とうとう仕事を休むようになってきた。。
そうこうして1ヶ月もたつと、だんだんイライラしてきた。

本当に体調が悪いだけかもしれない。
でも、避けられてる感じもある。義明には収入があるから、ひとみは引退したいのかもしれない。
俺と明日をすごすことは、ひとみの頭にはないかもしれない。

女の体調悪いとか、俺には分からない。

このまま俺が腐っていたら、店の中の人間関係までギクシャクとしてくることになりかねない。でも、心のどこにつっかえ棒をして、自分が立っていれば良いのか分からない。

久しぶりにおやじと話をしてみようかと思い立った。俺は、女を振り向かせようとしたことはないし、そもそも尻尾ふってくるようなのを適当に相手にした経験しかない。



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