くまさんとうさぎさんの秘密

再会再び

by 宇佐美 優那

学祭の1週間まえを切った。
平林さんは、演奏には妥協しない人だったから、本当に納得いくできに仕上がった。

平林さん流に表現するなら、「どうだ、まいったか」ってな感じ。

ジャズチームのトップバッターとして、本当にいい感じに仕上がった。そこは、MCがいらない組み方で、よく考えてあると思った。恐れ入りながら一曲聞いてもらったら、そのあと、ノリの良い気楽に聞ける曲を持ってきてあった。

リハーサルでは、衣装もメイクも当日のままに仕上げた。リュウジさんは、メイクもうまかった。
「化けたね。」と、オーナーが言った。
「卒業制作のモデルも頼んじゃおうかな」と、リュウジさんが言った。
平林さんのワンピースは、スタイルを引き立たせるような、細身のシルエットに仕上がっていた。私のワンピースは、座ると椅子の周りにフワフワと広がるシルエットに仕上がっていた。

前回のダメ出しからしたら、えらいおだてられようじゃないですか。何か、気分が上がると、パフォーマンスも良くなるって、すごく分かる気がした。
松野さんが、戦闘服って言い方をするけど、ちゃんとした服に守られてれば、演奏だって、やるべきところで出すべき音が出る。
いろいろ言う人もいるかもしれない。でも、自分で好きな服とお化粧ができてれば、リュウジさんが一緒に考えてくれれば、大丈夫なんじゃないかと思える。

演奏が始まる前、リュウジさんと、何枚か写真を撮った。ライブハウスの名前と、「お友だちのうさちゃんとみやこ」の、コメントと共に、この写真がネットにアップされることになった。学祭の宣伝も兼ねてた。
写真の中の私は、めちゃめちゃ可愛かった。
本当に、「自分じゃないみたい」といった感じだ。

リハーサルの後、「本番、お化粧が崩れてこないか心配。」と、私が言うと、リュウジさんが笑った。「大丈夫だよ。試しに、このまま飯食いに行こう。飯食っても落ちてなければ大丈夫。」

この日は、私は偶然バイトも空けていた。ジャズチームは、いつも、いつも晩御飯一緒に行くことが多いけど、何か、いつも、いつも断るしかなくて、そもそも誘われなくなってた。だから、嬉しくて、二つ返事で行くことにしてしまった。
松野さんも、キヨシさんも二人で実家に帰ると言うので、人は集まらなかった。
「私も、一緒していい?」と、平林さんが言った。
そういうわけで、統一感ある感じで、いかにもチームですという衣装で、、仮装行列のように、ごはん食べに行くことになった。
着替えた方が良いかとも思ったけど、せっかく着たばかりの衣装が名残惜しかった。




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